YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」とは
YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」をご存じですか?まだ観たことが無い方にも、大ファンの方にも楽しめるドラマの解説をお届けします。
■驚異的な再生回数で話題のYouTubeドラマ
待望の新シーズン~滋賀編が公開され、2024年2月にはついに総再生回数が1,200万回を突破!現在では、チャンネル登録者数も17万人を超えている大人気ドラマです。
■「おやじキャンプ飯」の作品紹介
コロナによって中華料理店を廃業し、キャンプ場を転々としながら暮らしている主人公「坂本明夫」。時折訪れる個性的な訪問客との出会いの中で、明夫の振る舞う美味しそうな中華料理にいつしかお腹も心も満たされる・・・。
ゆったりとした時間が流れ、焚き火が沁み入る物語です。主人公を演じるのは、名バイプレーヤーとして知られる近藤芳正さん。「30分の癒しの時間を・・・」というコンセプトで、毎シーズン全6話にて無料配信されています。
どのシーズンから入っても楽しめますが、ドラマが生まれたきっかけ、シーズン1・シーズン2についてを前回の記事にてご紹介しています。
この先はネタバレとなりますので、まだ作品を観たことが無い方はぜひこちらからご覧ください。
馬杉監督&「CYRUS9」本多さん対談インタビュー
今回は「おやじキャンプ飯」シーズン3~滋賀編について徹底解説!馬杉監督と第4話に登場した話題の焚き火台、ガレージブランドの「CYRUS9」を開発された本多さんとの対談インタビューにて作品についてお伺いしました。
■インタビュー会場の紹介
ドラマの舞台となったのは滋賀県高島市。インタビュー会場は同じ高島市にある「箱館山キャンプ場」さんにご協力いただきました。
■滋賀編を公開して
Yaiko:シーズン3~滋賀編が公開された今の心境をお聞かせください。
馬杉監督(以下監督):今は達成感と共にホッとしています。
シーズン2から新作の公開までは2年も空いていましたが、初回配信限定でファンの皆様がリアルタイムに書き込めるプレミア公開のチャット機能の初動は、シーズン2を超えていました。
YouTubeでは古いものが淘汰されていく中で、これだけ待ってくれていた人がいて、最後まで再生回数も落ちず感謝の気持ちです。
とにかく嬉しく作って良かったと思っています。
Yaiko:再生回数を見てもシーズン3の公開前は1,000万回だったのが、現在は1,200万回に。登録者数も16万人が17.8万人となり、僅か2ヶ月弱でこれだけの方が観られています。
監督:TVドラマだとだいたい1シーズンで終わるので、YouTubeのチャンネル登録をする必要はないと思う人が多いようです。そんな中で「おやじキャンプ飯」を登録し観てもらえたのが嬉しく、作り手の冥利に尽きる感じです。
シーズン3の1話ずつの再生回数は30万回や20万回や10万回ですけど、ドラマ全体では200万回も増えています。それは、シーズン1から遡って観てくれた人がいるからだと感じますし、併せてYouTubeは面白いと思いました。
シーズン3の第6話だけでもコメントが560件もあり、プレミア公開のチャット機能が無ければもっと多かったかもしれません。最終回は追いつかない程にチャットの書き込みが多くて感動しました。
特に、明夫さんと京子さんが1〜2分くらい無言になるシーンがあるのですが、その時のチャットが溢れて皆があんなに応援してくれ、明夫さんが愛されているのが嬉しかったです。
本多さん:書き込みでの応援は、リアル電車男のようでした。
監督:それは嬉しいですね。僕も面白かったです。エンドロールが始まってからも、途切れなかった書き込みが嬉しかったし感動しました。
■「おやじキャンプ飯」と「CYRUS9」
箱館山キャンプ場にて左からYaiko・馬杉監督・本多さん
Yaiko:第4話でガレージブランド「CYRUS9」の焚き火台「Flame in the Wind」が登場しましたが、採用されたエピソードをお聞かせください。
本多さん:馬杉さんとは2022年のGOOUT CAMP関西でお会いしてから、だいたいイベントでご一緒してました。今回は馬杉さんからDMをいただいてお誘いを受けたのがきっかけです。
監督:「Flame in the Wind」はすごく特徴的で他に無いデザインなので、ドラマのどこかで使いたいと思っていました。ドラマで登場するギアは僕が使いたい物を集めてきて、美術さんとコーディネートしていきます。
本多さんの焚き火台を第4話で使いたいとなり、ダッチオーブンを乗せてもいいかと確認しました。
本多さん:はい。実際に焚き火台で使用しているダッチオーブンの写真をお送りしました。大きなダッチオーブンだとそのまま乗せて使えますが、ドラマで使われたオレンジさんの「MIKAN」は少し小さいので五徳が必要でした。
焚き火台には「マルチグリドル」もハマることや、ケースにしても商品を使っていただいている方から教えてもらいました。何に合うか最初から狙っていた訳ではなく、余白をいっぱい楽しんでもらおうと作った中から色々と出てきました。
監督:YouTubeでも「どこの焚き火台ですか」と、「CYRUS9」のコメントが一番多かったですよ。
本多さん:使っているお客様がYouTubeのコメントに応えてくれていて嬉しくて号泣しました。ドラマの中でも焚き火台が使われたことで号泣して画面が見られませんでした。
シーズン2の第3話で温水さんが出演されたような、キワモノの回で出たら面白いなと思っていましたが、今回のしゅはまさんはデザイナーの設定でピッタリだと思いました。
明夫さんが炒飯を作っているところや、京子さんが「やっぱり美味しいな」と言う重要なシーンで使われたことにも泣きました。
Yaiko:焚き火台は男性的なイメージでしたが、オシャレなサイトの女性にも似合ってましたね。
本多さん:Instagramでもフォロワーは6割強が男性で、使っておられる方も圧倒的に男性ですが、ワーゲンバスのビンテージ感に合うんだと発見出来て良かったです。
Yaiko:私も使ってみましたが、火が点いたら世話がいらなく、ほったらかしでとても楽でした。
本多さん:京丹後の海によく行くのですが、風を防ぎつつ横から風が入って手間いらずで、ずっと焚き火の炎を眺めながら酒が飲めたらいいなと思っていました。
陣幕やリフレクターも良いけど風向きで位置を変えていくのは手間なので、その課題を解決できればと。筒状のものは考えていましたが、4~5年前からプロダクトデザインの方と試作品を2~3回作って、ようやく形になってきました。
試作の時は毎週キャンプに行き過ぎ、車の中がずっと焚き火臭い状態でした。
Yaiko:「CYRUS9」を知ってもらうのが一番の活動ですか?
本多さん:一見アウトドアだけのように見えますが、実は障害福祉の会社をしていています。「CYRUS9」は福祉商品のジャンルとなり、ちゃんと価値を持っているところを大切にしています。
障害福祉ですが、一般企業と同じく業務を割り振り仕事を利用者さんに携わってもらい実務経験を積んでいます。例えばプレスリリースを書いてもらったり、SNSを発信してもらったり、動画を作ってもらったりしています。
知ってもらって売り上げが上がることで、利用者さんの賃金になり意欲ややりがいとなっています。ドラマのクレジットに載せてもらっているブランドのロゴも、利用者さんに作り変えてもらいました。
第1話が公開された後、自分の仕事が一般の人に見てもらえた事でテンションも上がったし、達成感で仲間とハイタッチしたりして、そう言う意味でも号泣しました。
監督:貢献できて良かったです。
本多さん:そして今後は新商品というより、この焚き火台をカスタマイズしていけるような物を出していきたいと思っています。
Yaiko:実物を見られる機会はありますか?
本多さん:目黒のガレージブランド専門ショップと京都のレヴィー・トーマスさん、千葉県のランタンショップや台湾などに置いてもらっています。イベント出店についてもInstagramやXで発信してますので、ぜひフォローしてみてください。
滋賀編について深掘り~前編
■滋賀編のテーマについて
Yaiko:シーズン3~滋賀編のテーマについてお聞かせください。
監督:シーズン1では娘の事を、シーズン2では家族の事を描いてきました。シーズン3では坂本家の事から離れようと思い、候補を三つくらい出しました。家族に匹敵するくらいのテーマだとしたら、やはり恋は外せない。
元奥さんの関係が決着して、新しい恋に行っても良いのではないか。「60歳からの恋」とはどんなものだろうと考え、「マディソン郡の橋」等の名作や、恋愛ものや不倫ものを沢山観ましたけど何か違いました。
明夫さんも元奥さんも娘の千秋さんをしっかり育てて20年くらいは恋をしてないだろう。それは、初恋のような状態に戻るのではないか。
恋の仕方も分からないと良く聞く気がして、手が触れて「あっ」となるくらいの「初恋」が明夫さんに似合うのではないか。中学生のようなピュアな恋ではないか、と思いました。
ですが、途中までは中学生の恋のようでも、娘が現れて中学生の恋のままではいけないとなり、そこから6話を構成していきました。
Yaiko:キャンプ場を閉じてしまう設定にしたのはなぜですか?
監督:キャンプブームが去ったという事を表しています。「おやじキャンプ飯」はコロナがきっかけで生まれ、「しんどい時代に30分の休息を」という想いでドラマが生まれましたが、今はそのテーマでは出来ないと思いました。
キャンプブームのお陰でこの作品が知られたし話題にもなったのですが、ブームが終わったら辞めるというのは違います。逆に長く続けていくことが、キャンプを発信するコンテンツとして皆さんへの恩返しとして役に立てるのではないか。
その中で時代性は無視したくないので、キャンプ場が閉まっていく状況を取り入れたいと思いました。恋愛のテーマ的にも期間が限られている方がよりドラマチックになるので、この二つの事からキャンプ場が閉業する設定となり1ヶ月間の恋としました。
■ヒロインの中山忍さんについて
Yaiko:中山忍さんについてのエピソードをお聞かせください。
監督:「60歳の恋」のお相手は60歳ではなく、少し若い女性で視聴者のおじさんが明夫さんと一緒に恋したい方が良いと思いました。
配役を決めるのには、監督の横にずっと座り片腕みたいな立場のアクティングコーチと話しをします。そのコーチがヒロイン候補を出した時から中山忍さんを気になっていたらしく、キレイで透明感があって笑顔がステキな印象でした。
僕がヒロインに求めていたのは、ツンツンしているところからのデレにしたいと思っていました。笑顔を出さないところから始めて後半で笑顔になっていくような。
中山忍さんといえばステキな笑顔ですが、それを殺した演技にして欲しいと思い、第1話で明夫さんとの初対面のシーンで無愛想な表情を一番に想像できたのでオファーしました。
旦那さんが死んで1人でキャンプ場を経営している女性。中山忍さんは大変さもあり男性不信にもなっている、というところから始まり心を開いていく過程を見事に演じていただけたと思っています。
全ストーリーの解説~前編
■第1話
Yaiko:第1話では八宝菜を作った時に明夫さんの「ハイお待ち!」の台詞と、しまった感が面白かったです。
監督:ついついお店を出していた時の癖が出てしまいました。釣ったのは湖魚のハスだったかと思いますが、琵琶湖特有の魚で沢山釣れるが小骨が多くて食べにくく、身も少ないので調理が大変なようです。
明夫さんはお金がないので、食べにくくても工夫して調理しています。中華料理はお客さんが来た時にしか作らなくて、普段はカップラーメンとか魚を釣って焼いたり揚げたりをしています。
■第2話
Yaiko:FM802のDJ中島ヒロトさんがラジオDJとして出演されました!
監督:はい。シーズン1の時から応援していただいて、いつか出て欲しいと思っていたのでオファーしました。ヒロトさんにも快くOKしていただき、原稿を書いて普段のラジオのように話してくださいとお願いしました。
Yaiko:特に関西の人はテンションが上がったと思います。お声で元気をもらいました。
監督:自転車泥棒の小寺は、実際に大阪の留置所から脱走し日本一周していると装って、ただでご飯を食べさせてもらいながら窃盗をしていたという事件をモチーフにしました。
Yaiko:「日本一周すれば何か変われるかなと思ったけど、そんなに甘くない」という台詞がありましたね。
監督:本心半分、懐に入る気持ちも半分だったのでしょうか。色んな人に恵んでもらって隙を見て窃盗をしていました。
明夫さんの茶碗蒸しとおやじが作ってくれたというエピソードを聞いて、温かいご飯と家族に対する思いで気持ちが揺らぎ、夜に盗もうとしたけど何も取らずに去りました。
明夫さんは目を覚ましましたが、彼を信じているのか目を閉じて見守る・・・そこは好きなシーンでした。目だけの近藤さんの芝居が素晴らしかったです。視聴者は分かりにくいかと思いましたが、意外と分かってもらえたようです。
そして、ドラマでは明確には表してませんが、犯人が出頭したことをラジオで知りました。
■第3話
Yaiko:田辺桃子さんについてお聞かせください。
監督:さゆりさん役の田辺桃子さんは「ゆるキャン」に出られている方です。
「おやじキャンプ飯」の公式写真を撮っているタイナカジュンペイさんが田辺さんの写真集を撮っていて、「おやじキャンプ飯」も観ていると聞いていたので、出演の依頼をしたら本当に出られることになりました。
明夫さんには娘がいるので京子さんにも娘が良いのではと、田辺さんに当て書きをしました。京子さんっぽい気の強い一面と、桃子さんが演じている「ゆるキャン」の大垣千明の馬鹿っぽい感じのキャラクターを作りました。
明夫さんと京子さんのキューピット役みたいでもあります。田辺さんはイメージしていた通りのさゆり像を演じてくれて面白く、「変質者!」と叫ぶところがとても良かったです。
脚本上では確か変態だったような気がしますが、彼女のアイデアも結構入っています。
高島市のご当地グルメ「とんちゃん」を食べる所では、「ゆるキャン」で「肉食うか」と大垣が肉を食べるシーンのオマージュを入れました。
さゆりさんは予めキャンプ場に男性の従業員が来たことは聞いていて、男性不信になっているお母さんを心配して守るつもりでいました。最初は敵対していましたが、明夫さんの油淋鶏を食べ、人柄に触れて壁が取り払われました。
そして、星を見ながら寝てしまった明夫さんに、さゆりさんは毛布をかけてあげました。回想シーンではお父さんが亡くなっていることを明確には出していませんでしたが、お父さんに通じるものを明夫さんに感じていたようでした。
この時のお父さん役が料理監修の岡山さんで、娘役が僕の長女でした。シーズン2でも奇しくも同じ第3話で、温水さんの家族写真は僕の家族でした。
その写真について奥さんと娘からは、チャイナ服を着て白黒で無表情な写りが不評でしたが、今回は忍さんがキレイで優しくて喜んでました。
さゆりさんの反応も少しはあったのでしょうか、京子さんが笑うようになったのもこのあたりからで、ちょっとずつ明夫さんのことが気になってきました。
続きは後編へ
この後も馬杉監督とのインタビューはまだまだ続きます。明夫さんと京子さんの気になる恋の行方も更に掘り下げてお伺いしましたので、後編もお楽しみに!
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