YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」とは
YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」をご存じですか?まだ観たことが無い方にも、大ファンの方にも楽しめるドラマの解説をお届けします。
■驚異的な再生回数で話題のYouTubeドラマ
2020年10月に配信されたシーズン1の京都編は口コミやSNSで大きな話題となり、翌年の2021年12月にはシーズン2の和歌山編が公開されました。そして、満を持しての2023年12月22日。
待望の新シーズン滋賀編が公開され、2024年2月にはついに総再生回数が1,200万回を突破!現在では、チャンネル登録者数も17万人を超えている大人気ドラマです。
■「おやじキャンプ飯」の作品紹介
コロナによって中華料理店を廃業し、キャンプ場を転々としながら暮らしている主人公「坂本明夫」。時折訪れる個性的な訪問客との出会いの中で、明夫の振る舞う美味しそうな中華料理にいつしかお腹も心も満たされる・・・。
ゆったりとした時間が流れ、焚き火が沁み入る物語です。
主人公を演じるのは、名バイプレーヤーとして知られる近藤芳正さん。
「30分の癒しの時間を・・・」というコンセプトで、毎シーズン全6話にて無料配信されています。
どのシーズンから入っても楽しめますが、ドラマが生まれたきっかけ、シーズン1・シーズン2・シーズン3前編についてを前回の記事にてご紹介しています。
この先はネタバレとなりますので、まだ作品を観たことが無い方はぜひこちらからご覧ください。
馬杉監督&「CYRUS9」本多さん対談インタビュー
箱館山キャンプ場にて左からYaiko・馬杉監督・本多さん
今回は「おやじキャンプ飯」シーズン3~滋賀編について徹底解説!馬杉監督と第4話に登場した話題の焚き火台、ガレージブランドの「CYRUS9」を開発された本多さんとの対談インタビューにて作品についてお伺いしました。
※「CYRUS9」については「シーズン3前編の解説」をご覧ください。
全ストーリーの解説~後編
■第4話
Yaiko:しゅはまはるみさんについてお聞かせください。
監督:シーズン3のテーマを「60歳からの恋」と決めて、脚本家3人と誰が必要か話している中で、パンを焼く女性の回を作ろうとなりました。しゅはまさんはキャンプが好きで、シーズン1もシーズン2も観られていたのを聞いていました。
東京でお会いした時に「出たいです」と仰ってくれて、本当にキャンプが好きな事も感じられたのもあり、構想段階でオファーしようと思い当て書きをしました。
Yaiko:第4話の脚本は三井さんでしたね。
監督:はい。三井さんには以前からパンの回を作りたいと提案されていましたが、パンは撮影も作るのも時間がかかり大変でした。
オレンジさんからダッチオーブン「MIKAN」を6個くらい提供してもらい、それでも撮影時間が限られる中で失敗するとダメなので、皆で持ち寄って10個くらいのダッチオーブンで予備のパンを焼きました。
前日、料理監修の岡山さんだけでは準備が間に合わないからと、スタッフも一緒に深夜2時3時頃までパンをこねた努力もあって、すごく美味しく焼き上がりました。
ちぎりパンは割りと簡単で途中まで発酵させていれば、後は一定の温度になるよう炭で焼くだけで完成します。
Yaiko:第4話ではプレミア公開のチャットでも、しゅはまさんご本人が登場されて楽しかったです。
監督:ご本人が来てるのにチャットで誰もその事に触れずにいましたが、本物と分かっていたのでしょうか。しゅはまさんがチャットに馴染んでいるのも面白かったです。
■第5話
Yaiko:娘の千秋さんがお父さんに会いに来られましたね。
監督:明夫さんは傍から見たらホームレスなので、新しい恋をしても女性を迎えるのはすごく難しいと思います。ひとつひとつ丁寧に階段を上って行かないと恋が出来ないから、絶対娘の一押しが必要でした。
千秋さんもロケット事業が上手くいかなくてお父さんへ会いに来たのですが、お父さんが恋しているのに気が付いて背中を押してあげました。千秋さん自身もお父さんのご飯を食べて元気になって帰って行きました。
構想では1ヶ月間の恋なので、千秋さんの登場は最終話のキャンプ場が閉業する日にしようと考えていたのですが、一つ前の第5話にしました。
最終日はキャンプ場の常連さんが、お別れのために集まる日としました。賑やかな雰囲気と明夫さんの心の対比というか、一番寂しい日だけど一番盛り上がる日に娘も来て、明夫さんは気まずさもあり、色んなことがわちゃわちゃとする回にしたかったのです。
Yaiko:第5話はエキストラの回で私も参加させてもらいました!貴重な機会で撮影の裏側を知ることができました。
監督:雑音が入ったらダメなので思っているよりピりつくでしょう。役者が集中できる環境にするのが僕らの仕事でもあります。エキストラの皆さんには喜んでもらいたいので、出来るだけちょっとでも映るようにしています。
Yaiko:ドラマのファンだからこそ関東からロケ地の滋賀県まで来られた方もいて、撮影の現場にいられるだけでも幸せですし、ちょっとでも映っていたら更に嬉しいですよね。
監督:実は、僕は第5話だけプレミア公開が観られなかったのです。エキストラの方のチャットコメントはありましたか?
Yaiko:皆さん自分が映ってるか一番気にされていたと思います。けれど恥ずかしいのとストーリーを追うのが忙しくて、コメントには書けなかったのかもしれません。エキストラでもそれぞれ役割がありましたが、どのように決めたのですか?
監督:映像に出て欲しい方のアバウトな指示はしていましたが、現場での采配はプロデューサーと助監督とで決めました。
■第6話
Yaiko:キャンプ場を閉める最後の朝、明夫さんは京子さんの為に朝早くから手打ち麺を作り顔を粉だらけにして、でも京子さんに会う時はヘアもセットして小綺麗でしたね。
監督:ジャケットも同じ青ですけど新しくちょっとビビットな色の物を着ていて、一応どこかに行く時のために車に積んでいました。
実は、3シーズンの作品の中で麺の登場は初めてでした。麺は明夫さんにとって特別なものなので、京子さんのための勝負麺でした。ちょっとオシャレなランチョンマットを敷いていたのは、第4話の高子さんからもらったものです。
明夫さんは毎回出会った人から何かをもらって、その後もずっと大切に使っています。明夫さんは京子さんを誘うチャンスは何回もあって、特に第5話の「良かったら・・・(一緒に行きませんか)」と言おうとしたけど詰まってしまいました。
第1話でYouTubeでホームレスとディスられ、第3話でもさゆりさんから「家が無いのは無理だよ」と言われ、最後の一言が出ませんでした。
Yaiko:ラストの「じゃあまた、明日」という台詞は、第1話から明夫さんは言っていましたね。
監督:京子さんは旦那さんが死んでから、明日が無くなってしまいました。旦那さんに「じゃあまた、明日」的な事を言われたのですが、交通事故でそのまま帰らぬ人となりました。
このドラマは「明日」と言えなくなった京子さんが、また言えるようになるまでの成長でもあります。明夫さんはやせ我慢だけど、京子さんにとっては明夫さんとの出会いが次に進ませてくれました。
Yaiko:明夫さんがキャンプ場を去る時に、サイドミラー越しにはいつまでも見送る京子さんの姿が映っていましたね。
監督:明夫さんはそれを分かってはいるけど、振り返らないという切ない終わり方にしました。
Yaiko:エンディングは、琵琶湖で象徴的な白髭神社の映像がひときわ胸を打つシーンでした。
監督:最後は美しい琵琶湖で終わりたかったし、方角的にも西へ向かいました。明夫さんの車がだんだんと見えなくなっていくシーンとなりました。
Yaiko:明夫さんが九州に行くのは決定ですか?
監督:今、応えられるのは九州の方へ向かったけど・・・だけです。
Yaiko:京子さんは明夫さんに「一緒に行こう」と言われるのを待っていて、お迎えが来るのも嘘だと思いました。
監督:女心的にあの時言われたら行きますかね。
Yaiko:行きますよ!
監督:その回答は嬉しいです。
本多さん:皆思ってましたよ。京子さんにハッキリ言ってくれたらと。あれが60歳の恋なのでしょうか。
監督:中学生の恋のままでは済まなかったですね。
本多さん:ドラマを観ながら「切ないー」と言ってました。振られた訳ではないけれど、令和版寅さんのようですね。京子さんからもらったドリームキャッチャーも、更に切なくなりました。
Yaiko:「じゃあまた、明日」の台詞は、次のシーズンに続く事を意味するのでしょうか?
監督:そう捉えてもらえてもいいな、くらいにはと思ってました。続けていこうと思っていますが、それは作り手のエゴなのでファンがゼロなら作れません。1回1回が勝負で1シーズンに懸ける想いで作っています。
次回を求められたらいいなくらいの気持ちで、先の事を考えてしまうと出し惜しみもしてしまうだろうし。ドラマとして明夫さんと京子さんの心がどう動くかだけで出てきた言葉でした。
結果的にチャットでも沢山の人が「じゃあまた、明日」と書き込みをしてくれて、次のシーズンへと捉えられることも出来て嬉しかったです。
滋賀編について深掘り~後編
■近藤さんのアイデア
Yaiko:「ゆる体操」がアップデートされていました!
監督:「ゆる体操」は近藤さんが健康面を大事にされいて、シーズン1から近藤さん自身が持ち込まれたものです。脚本ではラジオ体操としていたのですが、近藤さんの案が面白くて「ゆる体操」となりました。
第2話で5カットくらい撮りたいと提案したら、近藤さんが「こんなのあるよ」と現場で見せてくださって選ばせてもらいました。ネバネバ歩きも「ゆる体操」の一つで、だらーんとするのは別の体操を取り入れました。
近藤さん自身も「ゆる体操」のレベルが上がっています。近藤さんのアイデアは結構取り入れているのが多くて、第1話の琵琶湖で職を探している時に手にお灸を据えているのもそうです。
第4話でアイマスクをしているのもそうで、使い捨てなのにずっと使っている方が面白いと現場で美術さんに汚してもらいました。
■主題歌の「運河」について
Yaiko:主題歌の「運河」はどのようにして作られたのでしょうか?
監督:谷澤ウッドストックさんに書き下ろしてもらいました。シーズン1の「灯し火」も翌日に上がってきましたが、今回もすごく早く出来上がり一切修正はありませんでした。
ウッディには「60歳からの恋」と伝えてその当時の脚本を送りますが、歌詞が具体的になり過ぎるのであまり見たくないらしく、僕が説明してだいたい出来上がります。そして、本当にドラマ通りの歌詞と曲だと思います。
すごいです。彼はもう天才です。声もとても良くて、あんな若い人が歌っているのかと思います。リクエストとしては「ギターにちょっとだけ恋の不安定さを入れて欲しい」だけでした。
ギターの音色がちょっと上がるところに不安要素が足されていて、こんなことが出来るのだと感心しました。
毎回ドラマの最終話は、主題歌のフルバージョンを流しています。ラストの琵琶湖でのドローンの風景は最初から考えていて、「運河」の切ない歌と共に作品を締めくくっています。
メイキング映像では、第5話でエキストラの皆さんに向けて歌った時の「運河」がエンドロールで流れます。
■中華料理について
Yaiko:料理はどのようにして決めているのでしょうか?
監督:絵的な事からリクエストしています。第1話は琵琶湖の湖魚を扱い、やっぱり中華鍋を振らないといけないとか、色が多いものとかを考えて八宝菜となり、脚本家と相談しながら決めています。
女性の脚本家、三井さんは第4話で具体的にパンを提案されましたし、シーズン2の温水さんが演じた陳さんが登場する第3話でも具体的でした。
もう一人の脚本家、江藤さんは第2話のしんみり系で、茶碗蒸しを作るシンプルな提案でした。三者三様のリクエストをして、料理監修の岡山恒太郎さんが、キャンプ場で安価に作れるレシピを考案してくれています。
中華料理は沢山あるので予めリストアップしているのですが、3シーズンで18話分がリストから消えていきました。だんだん少なくなっていくので、韓国料理とかに派生の糸口を見つけつつアレンジしていくかもしれません。
今回は初めて麺を出しましたけど、いつか麺で1シーズンやりたい構想もあります。
料理は1回指導して、一通りは近藤さんに演じてもらう事が殆どです。手元は岡山さんのアップでもう一度撮影しているのですが、実際に使われた映像は半々か少し近藤さんのシーンが多いかもしれません。
近藤さんも器用なので料理もどんどん上手くなってきています。
■音のこだわり
監督:毎シーズン音にすごくこだわっています。音の担当は松野さんがされていて、現場で録音をしますが後でアレンジもしています。今回はリアルな恋愛がテーマですが、ある種ファンタジーでもあるので春夏秋冬の動物や虫の鳴き声を入れました。
良く聴いてもらうと、物語が進むにつれて動物や虫の声も季節が進んでいます。春の出会いから始まり、夏で盛り上がり、秋冬に向かう。全部後から足しているので、音にも注目してもらいたいです。
Yaiko:エンディング以外は音楽が殆ど流れないですね。
監督:元々「おやじキャンプ飯」のコンセプトは「BGMになるドラマ」ですので、自然を感じて欲しいところから極力省いています。音楽の代わりに自然の音を入れています。
滋賀編公開記念キャンペーン
Yaiko:キャンペーンやイベントの予定はありますか?
監督:滋賀編の公開記念として色々と予定しています。
詳細は順次発表していきますので、ぜひ公式X・公式Instagramをチェックしてみてください。
・コラボ商品
・ロケ地を巡るスタンプラリー
・クラウドファンディングの特典ファンミーティングなど
これからの「おやじキャンプ飯」
Yaiko:これからの「おやじキャンプ飯」についてお聞かせください。
監督:1年に1シーズンは作っていきたいので、今月から動いていこうと思っています。
ありがたいことに地域とか、うちで撮って欲しいとかリクエストをもらっています。
ストーリー的には九州に行くのかそれとも途中なのか、僕が足を運んでシナリオハンティングとロケーションハンティングをして決めていけたらと思っています。
今、ドラマには大きなテーマが三つあり、一つ目の「60歳からの恋」を描いたのであと二つになります。
ある程度は出来上がっている話しがあるので、それを描いていくかなという感じですが、今年次のシーズンを作りたいと考えているだけで実際はほぼ白紙の状態です。
ドラマとして滋賀編でもやりたいことはやりきりました。あとは琵琶湖の湖魚とかとんちゃん・鮒ずし・地ビール・近江牛など、ご当地のものをもっと扱っていきたいです。
ロケ地を巡るスタンプラリーやコラボ商品など、地域に根差した活動をもっと出していきたいと思ってます。
YouTube以外の媒体も広げていきたいですし、Amazonプライムは流れていますけど、もっと色々なところでドラマを観られるようにしていこうと思っています。
春先とかの催し物もお誘いをいただいていて、ファンの皆さまと話せるのは貴重な機会なので出来るだけ参加していきたいです。地元の関西はもちろんですが、関東などに行ってもすごく沢山来てくださってありがたいです。
出会いの場から新しいものが生まれたりするので出ていきたいと思っています。
キッチンカーも出したいですね。明夫さんの炒飯とかちょっと食べてみたいじゃないですか。どうやったら出来るのか模索してます。
本多さん:キャンプ場で提供したら沢山人が来そうですね。
監督:イベントでも展示しか出せてなく、せっかくキャンプ飯のドラマなのでキッチンカーが作れたら岡山君と出したいと話しています。
ファンの皆さまへメッセージ
2年間全く更新のないYouTubeチャンネルですが、待っていていただき、そして観ていただいて本当にありがとうございます。皆さまに感謝の気持ちを伝えたいと思います。
坂本明夫の旅は続いていきますので今後もよろしくお願いします。
おわりに
「おやじキャンプ飯」シーズン3~滋賀編。大人の恋の行方は切なさの中で、顔を上げて前へ進む優しさと勇気をもらいました。運命のように流れていく明夫さんをまたどこかで・・・。
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